青春小説の傑作として実写映画化や漫画化、アニメ化もされて今なお非常に高い評価を受けている
三浦しをんさんの「風が強く吹いている」
お正月にテレビで見かける箱根駅伝。
「大人たちは熱心に見入ってるけど、その良さがいまいちわからない」
そんな僕が読んでも駅伝の魅力を肌で感じて熱くなると同時に、感動することができる一冊でした。
読むことで心動かされる体験ができるだけでなく、箱根駅伝の仕組みやその面白さまでも理解することができるような作品。
今回はそんな「風が強く吹いている」の魅力とおすすめポイントを紹介していきたいと思います。
それでは早速いきましょう!
「風が強く吹いている」のあらすじ
天才ランナーでありながら、とある理由で走ることから距離をおいていた蔵原走(かける)。
そんな彼が同じく寛政大学の生徒で箱根駅伝を目指す清瀬灰ニ(ハイジ)と出会う場面から物語は始まる。
ハイジは寛政大学の寮「竹青荘」の住人たちを半ば強引に誘い、陸上未経験者も含めたちょうど10人のメンバーで箱根駅伝初出場を目指す。
一見無謀とも思えるこのチャレンジをハイジ率いる10人がどのように進め、いかにして箱根駅伝を目指して行くのか、その過程が描かれます。
「風が強く吹いている」の魅力とおすすめポイント
箱根駅伝について知ることができる
「箱根駅伝をお正月にやっているのはわかるけど、何がそんなに面白いのかわからない」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。
僕も実際そうでした…笑
しかしそんな人にこそ読んでいただきたいのが本書です。
有名な「花の2区」や「5区山登り」以外にも、3区は海からの横風が厳しかったり、9区は裏エース区間であるなどなど、細かいところまで知ることができます。
またコースに応じたその区間に向いてるランナーの特徴、走り方のフォームや性格などがあるというのも面白かったりもします。
スタートの1区は団子状態なので周りを気にせずに自分のペースで走れる人間が向いていて、6区の山下りはすごいスピードが出るのでフォームの重心が低く、肝が据わっている人間などなど。
こうした知識があると、いつもはなんとなく見ていた箱根駅伝がとても楽しく見れるようになるんですよね。
そしてこうした箱根駅伝そのものはもちろん、そこまでの険しい道のりや実際にレースを走る者の思いやそれを支えるサポート体制など、華やかな舞台の裏側の部分まで箱根駅伝について知ることができるのも魅力的。
「選手が走る姿を間近で見ているような体験を通じ、本書を読む前と後では毎年の箱根駅伝の見え方が大きく変わる」
そんな経験をするきっかけとなってくれるのが、本書の大きな魅力の一つです。
「走る」とは。
「なぜ人は走るのか」
これについて考えたことあるという方もいるのではないでしょうか。
「あんなに苦しいことを何が楽しくて、毎日毎日せっせとやっているのだろう?」
その疑問に対する答えの一つを本書を通じて知ることができます。
ランナーが極限状態で初めて感じることができるという「ゾーン」という状態が、三浦しをんさんの見事な筆致で描かれます。
「ランナーズハイ」とも言われるもので、ある地点を越えると走りに伴う一切の苦痛が消えて無限に走っていけるように思える境地。
この感覚が多くのランナーを走ることに夢中にさせるのだとか。
そんな感覚を味わってみたくなり、読後は思わず自分も走って風を感じたくなる気持ちになること間違いなしです!笑
メンバーの友情と絆を感じる
駅伝は実際に走るのは一人でも、その裏には他のメンバーとの確固たる繋がりがあります。
たとえ自分が苦しい時でも仲間のことを思うと、自らの限界を超えた大きな力を発揮することができる。
それはもちろん長い時間を共にし、一緒に苦しい時間を乗り越えてきた仲間との絆があってこそです。
本書ではそのことをありありと感じ、胸を熱くさせられます。
ランナーひとり一人はみな自分のためだけでなくチームみんなの期待や思いを乗せて走っているということを改めて感じさせられます。
これを知るとお正月にテレビで見る箱根駅伝から受け取れるものがまた変わってきたりしますよ。
登場人物の努力と「成長」を感じられる
チームのメンバーがみな個性的かつ魅力的なのが本書の魅力の一つでもあるのですが、そのメンバーひとりひとりが努力を重ね、技術的にはもちろん、精神的にも成長していく姿も印象的です。
はじめは「モテたいから」「就活の役に立つから」「弱みを握られているから」など、
よこしまな理由で始めた初心者同然のメンバーも、ハイジの練習をこなす中で着々と力をつけてグングンと成長していきます。
技術的に成長し、タイムノルマや予選会など箱根へのいくつもの関門を超えていく姿には思わず胸を打たれます。
またハイジの「ただ”速い”だけでなく”強い”ランナーになれ」という言葉の通り、メンバーが精神的にも大きく成長していく姿を目の当たりにすることもできます。
走の成長
特にそれは主人公の走(かける)に顕著に見られます。
最初は「自分が自分が」と感情に振り回されていた走が、ハイジやライバル選手から影響を受けながら自らを見つめ直して自己を把握し、自分をコントロールできるようになっていきます。
何か大きな成果を出す人というのは「自分」について誰よりも理解し、その上で自らの取るべき行動を取っているもの。
このことを踏まえて技術的にも精神的にも成長していく姿からは、自らの人生にも活かせるような教訓のようなものを感じることができます。
駅伝を通して彼が最終的にどう変化し物語がどのような結末を迎えるかは、ぜひ本書を手にとって実際に読んでいただきたいです…
まとめ
今回は「一瞬の風になれ」の魅力とおすすめポイントを紹介させていただきました!
選手が走る姿を間近で見ているような体験を通じ、箱根駅伝について知ることができ、新たに世界を広げてくれる可能性を持つ一冊です。
冗談抜きで箱根駅伝の見方が変わります笑
またメンバーそれぞれが「成長」していく姿に胸が打たれること間違いなしの作品。
少しでも気になるという方はぜひ一度読んでいただければと思います。
この記事が、皆さんがこの作品の良さに気づき、実際に読んで心動かされる体験をするきっかけとなれば幸いです!