【米津玄師の中で最も難解な曲?】「vivi」の歌詞の意味を解釈 

音楽

米津玄師さんの1stアルバム「diorama」に収録され、初期の代表曲とも言える「vivi

初期のオリジナリティ溢れる不思議なメロディが印象的な一曲ですよね。

しかし「なんとなく良い曲だけど、その歌詞の意味を説明しろと言われたら自信がない…」

という方も多いのではないでしょうか。

米津さんの楽曲の中でもとりわけ難解で、解釈が分かれるのがこの「vivi」です。

そこで今回はこの曲を何十、何百と聴いたぼくが、MVや米津さんのインタビューも踏まえた上で、

この楽曲に込められた物語とメッセージ紐解いていきたいと思います。

それでは早速いきましょう!

結論

出典:YouTube

「vivi」は人と人との分かり合えなさを、2人の物語にのせて切実に歌った曲であると言えます。

実際米津さん自身もインタビューで、

「vivi」は「人と人とはどうやってもわかり合えない」ということを広げていった結果できた曲であると述べた上で、

「自分の内面世界に一番近いのが、この曲」であるとも語っています。(音楽ナタリー

このことを踏まえた上で、以下では歌詞を細かく深掘り、そこに隠された2人の物語を見ていきましょう。

「vivi」の歌詞の意味を解釈

1番Aメロ

悲しくて飲み込んだ言葉
ずっと後についてきた

苛立って投げ出した言葉
きっともう帰ることはない

ここでは「言葉」の取り扱いの難しさ、影響力の大きさについて語られます。

外に出せず自分の内に抱え込んだしまった言葉は常に自分の頭の中に残る一方で、

他者に吐き出すようにして外に出した言葉はこれからずっと消えることがありません。

こうした「言葉」の取り扱いの難しさに触れた上で、2人の物語はどのように進んでいくのか、続きを見ていきましょう。

1番Bメロ

言葉にすると嘘くさくなって
形にするとあやふやになって
丁度のものは1つもなくて
不甲斐ないや

ここでは、自分の内面を形にすることの難しさが語られます。

自分が思っていること、感じていることを相手に伝えるためには、文字や言葉、音楽、アートにしても、必ず何かしらの「形」にする必要があります。

しかし自分の内面を完全に表してくれる「表現」を見つけることは、不可能であるといっても過言ではありません。

MVでも試行錯誤の末に結局、口をつぐんでしまう「僕」の様子が印象的です。

そして曲はサビへと繋がります。

1番サビ

愛してるよ、ビビ
明日になればバイバイしなくちゃ
いけない僕だ

灰になりそうな
まどろむ街を
あなたと共に置いていくのさ

私たちは、今日この瞬間と同じ自分を生きることはできません
それは肉体的にはもちろん、精神的にもです。

「ビビ」は英語の「vivid」もしくはイタリア語の「vivi」から来ていると思われます。

いずれにせよ、鮮明さやいきいきとした印象を感じることができると思います。
すなわち「ビビ」は、「今この瞬間」を表している存在であると解釈することができます。

これは「灰になりそうなまどろむ街」と対照的に描かれていることからも、読み取れます。
この「街」は「移り変わる過去」を暗示しているものでしょう。

そんな「街」に「ビビ」を残していく、という選択をした「僕」

以下では「僕」がなぜそのような選択をしたのか、その理由について細かく見ていきましょう。

2番Aメロ

あなたへと渡す手紙のため
色々と思い出した

どれだって美しいけれども
1つも書くことなどないんだ

「ビビ」への手紙を書くため、「僕」が過去を振り返る様子が描かれます。

彼女に伝えたいことはたくさんあるはずなのに、「一つも書くことなどない」

それはどうせ手紙として書いたとしても、自分の思っていることありのままを表すことはできないからです。

これは1番Bメロで語られていたことと同様ですね。

自分の中にある間は「美しい」のだけれど、それを完璧に伝わるように表すことができずに苦しむ「僕」の姿が印象的です。

2番Bメロ

でもどうして、 言葉にしたくなって
鉛みたいな嘘に変えてまで
行方のない鳥になってまで
汚してしまうのか

この2番Bメロが、この曲を理解する上でカギとなるパートです。

自分の気持ちを完璧に「形」にすることができないと知ってもなお、

それを表現して相手に伝えようとしてしまうことから葛藤する「僕」の様子が描かれます。

自分の気持ちや感じていることを完璧に全てを伝えることが無理であっても、どうにか「形」にして「ビビ」伝えたいということがわかります。

しかしいざ言葉にしたことも「鉛みたいな嘘」「行方のない鳥」になるだけで、自分の内面を劣化させたものに過ぎない。

そんな理想と現実の葛藤を抱えたまま、曲はサビへと続いていきます。

2番サビ

愛してるよ、ビビ
明日になれば
今日の僕らは死んでしまうさ

こんな話など 忘れておくれ
言いたいことは一つもないさ

鮮明さを伴い、いきいきとした「今」を表した「ビビ」とは対照的な存在として、

自らの内面を「vivid」に表せない、言葉や「話」が描かれているのが印象的です。

結局、「僕」が今話していることも真実ではなく、自分の思っていることも伝えることができません。

そして「言いたいことは何もない」と「僕」は諦めてしまいます。

Cメロ

溶け出した琥珀の色
落ちていく気球と飛ぶカリブー
足のないブロンズと
踊りを踊った閑古鳥

忙しなく鳴るニュース
「街から子供が消えていく」
泣いてるようにも歌を歌う
魚が静かに僕を見る

どうにもならない心でも
あなたと歩いてきたんだ

このCメロはとりわけ解釈が分かれる箇所ですが、全体の流れや構成、伝えたいテーマから考えると、

ここは天変地異のような異常事態が起こった様子が描かれていると見ることができます。

「落ちていく気球と飛ぶカリブー」「足のないブロンズ」「踊りを踊った閑古鳥」など、

普通では考えられない、ありえない描写が次々と描かれるのが印象的です。

そんな「どうにもならない」事態にあってなお、

今まで「僕」が「ビビ」とこれまで歩んできたという事実や「ビビ」への思いを確かめたことで、

それらは間違いなく確かなものである、ということに気づきます。

そして曲はラスサビへと繋がっていきます。

ラスサビ

愛してるよ、ビビ
明日になればバイバイしなくちゃ
いけない僕だ

言葉を吐いて
体に触れて
それでも何も言えない僕だ

愛してるよ、ビビ
愛してるよ、ビビ
さよならだけが僕らの愛だ

これまでと同様、言葉は自分の内面を完璧に表したものではなく、自分の感じていることを伝えることができない、ということが述べられます。

「言葉を吐いて 体に触れて」いるのにも関わらず、「何も言えない」というのが、寂しくも「僕」の気持ちを切実に表しています。

「ビビ」への思いは確かに「僕」の中に存在する。

しかし、その思いをありありと伝えることはできず、2人は完全にはわかり合うことができないのだから、別れるという選択をした「僕」

このことが「別れ」を表す「さよならだけが僕らの愛だ」という、なんとも悲しい結末へと繋がり、曲は締めくくられます。

しかし悲しい結末ではあるものの、MVで「ビビ」が涙を流しながら、笑みを浮かべているのがとても印象的です。

まとめ

今回は「vivi」の歌詞を解釈し、そこに込められた物語やメッセージを紐解いてきました。

なんとも悲しい結末を迎えてしまうこの曲ですが、

そこには「人と人とは永遠にわかり合うことができない」というとても考えさせられるテーマが隠されているということに気づかされます。

幼い頃から人とのコミュニケーションに、人並み以上に難しさややり切れなさを感じていた米津さんだからこそ書ける歌詞なのではないかと思います。

この記事が、皆さんの「vivi」という曲の理解を深め、この曲をより味わうことができるきっかけとなれば幸いです。