米津玄師さんの2ndアルバム「YANKEE」に収録されている楽曲「花に嵐」
ロックテイストの曲調で耳でももちろん楽しめながら、その歌詞までじっくりと味わうとまた違った深みを感じられるような一曲です。
米津さんの曲の中ではあまり知名度は高くないですが、個人的に指折りの名曲であると思っています。
少し抽象度が高い表現も多く理解しきるのが難しい曲ですが、何度も何度も聞くことでその意味するところが見えてきます。
そこで今回は、この「花に嵐」の歌詞を解釈し、その意味するところ、隠された物語について深掘っていきたいと思います。
それでは早速いきましょう!
結論
この曲は「他者がくれた優しさに気づくまでの物語」であると見ることができます。
ちなみに「花に嵐」とはことわざで「良いことには、とかく邪魔が入りやすいことのたとえ」という意味だそう。
この曲でいうところの「良いこと」と「邪魔」とは何のことなのか。
以下で歌詞を深掘っていきましょう!
「花に嵐」の歌詞の意味を解釈
1番Aメロ
雨と風の吹く 嵐の途中で 駅は水面に浮かんでいる
轍が続いて遠い靄の向こう ひとりで眺めて歌ってはそうだあなたはこの待合室 土砂降りに濡れやってくるだろう
そのときはきっと笑顔でいようか もう二度と忘れぬように
嵐の中、駅の待合室で「わたし」が一人でいる様子が描かれます。
米津さんの曲では、冒頭に情景描写が描かれることが多いです。これにより一気に作品の世界観に引き込んでくれます。
ここでのポイントは、わたしが「ひとり」で「あなた」のことを待っているということです。
そんなあなたはどのような人物なのかというと、土砂降りの雨に濡れながらわたしのもとにやってこようとしています。
ここから「あなた」は周りのことに集中すると、自分のことは気にすることができないような不器用なところがある人物であることがわかります。
そんな「あなた」に対し「わたし」は過去を思い出し、笑顔を向けようとしています。
二人の間には一体どんな過去があったのか。
それは後に明らかになるので、続きを見ていきましょう。
1番Bメロ
わたしにくれた 不細工な花
気に入らず突き返したのにな
あなたはどうして何も言わないで
ひたすらに謝るのだろう
タイトルにもあり重要な意味を持つ「不細工な花」
ここでは「あなた」が「わたし」にくれたということしか分かりませんが、後にその正体が明らかになります。
この曲の核心部分であることは間違いないので、よく心に留めておいてください。
その「花」を「わたし」は拒絶してしまったことが読み取れます。
それなのに怒ることもせず、ただ謝るだけの「あなた」
ここにもこの人物の人間性が表れています。
1番サビ
悲しくて歌を歌うような
わたしは取るに足りなくて
あなたに伝えないといけないんだ
あの花の色とその匂いを
「わたし」が悲しい状況にいたことがわかります。
なぜ「取るに足りない」のかも、後に明らかになります。
「後に」ばかりですが、それももうすぐですので、あと少しだけお付き合いください笑
「あなた」がくれた「花」の詳細について、直接伝えたいと思っている「わたし」の様子が描かれます。
その時は伝えられなかったことに対する後悔の気持ちがあることが読み取れます。
2番Aメロ
そうだあなたはこの待合室
風に揺すられやってくるだろう
そのときはきっとぐしゃぐしゃになって
何も言えなくなるだろうな
1番Aメロと同様、待合室での様子が描かれます。
不器用な「あなた」に対して、言葉で表すのが難しいほど、いろいろな感情を抱いているということが読み取れます。
それは一体どのようなものなのか、続きを見ていきましょう。
2番Bメロ
悪戯にあって 笑われていた
バラバラにされた荷物を眺め
一つ一つ 拾い集める
思い浮かぶあなたの姿
お待たせしました!笑
「後に後に」と散々引っ張ってきた部分が、ようやくわかってくるのがこの2番Bメロです。
わたしは「悪戯」すなわち「いじめ」にあっていたことがここで明らかになります。
そんないじめの最中で「あなた」のことを思い出します。
2番サビ
はにかんで笑うその顔が
とてもさびしくていけないな
この嵐がいなくなった頃に
全てあなたへと伝えたいんだ
拒絶されても、恥ずかしがりながら笑うだけの「あなた」の不器用な優しさに「わたし」が気づき、自分がしてしまったことへの後悔を募らせています。
そして「この嵐」つまり、いじめやそれに付随する苦しく辛い状況が去ったら、
「あなた」がくれた優しさへの感謝やそれによりどれだけ救われたかを伝えなくてはと「わたし」は考えます。
ここで1番Bメロを思い出してみてください。
あなたがわたしにくれた「不細工な花」は、いじめに遭って辛い状況にある「わたし」に対して
「あなた」が差し出してくれた「不器用な優しさ」を喩えたものであることがわかります。
「どうしたの?」「何かあった?」など優しい言葉を「あなた」がかけてくれたことが想像されます。
Cメロ
苦しいとか悲しいとか 恥ずかしくて言えなくて
曖昧に笑うのをやめられなくなって
じっと ただじっと蹲ったままで
嵐の中あなたを待ってる
自分の弱い部分をさらけ出すことが恥ずかしく、曖昧に笑うだけで、何もできなくなり、
ただこの苦しい状況を耐えしのぶだけになってしまっている「わたし」
そんな中で「あなた」のことが思い出され、自然と頼りにして、今では心の拠り所としてしまっている様子が描かれます。
それだけに過去に取ってしまったそっけない態度が、余計に後悔の念を引き起こしているということがわかります。
ラスサビ
悲しくて歌を歌うような わたしは取るに足りなくて
あなたに伝えないといけないんだ あの花の色とその匂いをはにかんで笑うその顔が とてもさびしくていけないな
この嵐がいなくなった頃に 全てあなたへと伝えたいんだ花 あなたがくれたのは 花
最後、全ての種明かしのようにサビが繰り返されます。
いじめという辛く苦しい状況の中で、自分の負の感情ばかりに気を取られてばかりで「あなた」の優しさに答えられなかった「わたし」
そんな自分を「取るに足りない」と反省しています。
その上で今度は「あなた」がかけてくれた優しさに対して、「あなた」に直接しっかりと感謝の言葉を伝えようと決心して、曲は締めくくられます。
純粋な思いやりを「花」に喩えるのがとても美しく印象的な曲でした。
まとめ
米津玄師さんの「花に嵐」の歌詞とその意味するところを見てきました。
4分弱の音楽にここまで心動かす物語を詰め込み、表現する米津さんの才能の凄まじさを感じることができる一曲です。
「一編の短編小説を読んだような」という喩えがありますが、まさにこの表現がぴったりなのが、米津さんの音楽です。
自らが辛い状況にある時、自分のことばかりに目がいってしまい、周りの優しさに気づけないということはよくあることです。
そんな時に自分だけでなく、周囲にも意識を向けることの大切さをこの曲は教えてくれます。
この記事を通じて「花に嵐」の理解が深まり、心動かされる経験の手助けとなることができれば幸いです!